横浜市磯子区の閑静な住宅街に佇む「久良岐能舞台」は、大正時代から100年以上の歴史を持つ格式高い能舞台です。三方を山に囲まれた約8,000坪の広大な敷地に、伝統的な日本庭園と能舞台が調和し、訪れる人々に日本の伝統文化の粋を感じさせてくれます。
歴史と由来
久良岐能舞台の歴史は、大正6年(1917年)に遡ります。能楽会専務理事であった池内信嘉氏(1858~1934)が、囃子方の育成を目的として東京・日比谷に建造したのが始まりです。設計を担当したのは、能楽研究家でもあった法政大学教授の山崎靜太郎氏(楽堂)で、当時の粋を集めた本格的な能舞台として誕生しました。
その後、この舞台は東京音楽学校(現在の東京芸術大学)邦楽科に寄贈され、能楽専科生の育成に大いに貢献しました。創建以来、幾多の人間国宝を育んだという輝かしい実績を持つ、由緒ある舞台です。
昭和39年(1964年)に東京芸術大学に新しい能舞台が建設されると、この歴史ある舞台は一度解体されることになりました。しかし、昭和40年(1965年)、能楽愛好家であった宮越賢治氏がその価値を認め、譲り受けて現在の横浜市磯子区に移築・復元。さらに昭和59年(1984年)には宮越氏から横浜市に寄贈され、市民に開かれた文化施設として生まれ変わりました。
芸術的価値の高い能舞台
久良岐能舞台 – 平福百穂による鏡板の老松が見事
久良岐能舞台の最大の見どころは、日本画壇の重鎮・平福百穂が描いた鏡板です。能舞台の背景となる鏡板に描かれた老松は、特別な存在感を放ち、芸術的価値が極めて高いものとして知られています。創建以来、幾多の人間国宝をも育んだ歴史の重さと風格を感じさせてくれる能舞台です。
舞台の規模:
- 舞台面積:4.54m×4.56m
- 見所(客席):52畳
- 橋掛かり:幅1.6m×長さ3.6m
- 鏡の間:8畳
現代的な設備も整っており、最新規格の**Wi-Fi6(IEEE802.11ax)**にも対応しているため、能・狂言などの伝統芸能の発表会や練習はもちろん、コンサートなどの現代的な催事にも利用されています。
四季折々の美しい日本庭園
能舞台を取り囲む約8,000坪の敷地は、明治末期から梅、桜、楓、竹など四季折々の木々と草花に恵まれた自然豊かな空間です。横浜市では、能舞台の寄贈を受けた際に、建物と日本庭園の整備を行い、池泉回遊式庭園として造園しました。
庭園内には灯籠や水琴窟を楽しめる「つくばい」なども設けられており、散策に訪れる市民の憩いの場となっています。小鳥のさえずりが聞こえる閑雅な雰囲気の中、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
施設案内
茶室 – 落ち着いた隠れ家
茶室 – 水琴窟の音色が聞こえる静謐な空間
水琴窟の音色が聞こえる落ち着いた雰囲気の茶室は、茶会や句会などに最適です。掛け軸や生け花が配された床の間があり、茶道の精神が息づく空間となっています。
- 茶室:4.5畳
- 水屋:3畳
和室 – 使い勝手のいい部屋
和室 – 庭園を望む開放的な空間
四季折々の花々や紅葉に彩られた庭園を眺めながら、お稽古事や講座などに利用できます。障子を開けると緑豊かな庭園が広がり、自然との一体感を楽しめます。飲食も可能で、使い勝手の良い空間です。
- 続き間:8畳+6畳(襖で仕切ることも可能)
多彩な催事
久良岐能舞台では、「敷居を下げずに跨ぎやすく」をモットーに市民が楽しむ伝統芸能からお化け屋敷まで、様々なイベントが開催されています:
- 新春・竹灯篭まつり(横浜芸者と神楽のコラボ)
- 日本舞踊公演&発表会
- くらきナイト(お化け庭園と講談などの夏の風物詩)
- ろうそく能(生の灯りを使った幽玄で幻想的な能と狂言)
- 婚礼(人前式…ゆったりとした自由な演出)
- 弦楽四重奏などのクラシックコンサート
- 茶会(薄茶席・濃茶席)
公式ウェブサイトの「この頃花頭窓」で久良岐能舞台の雰囲気を楽しむ事ができます。
施設情報
住所
〒235-0016 神奈川県横浜市磯子区岡村8-21-7
アクセス
- 徒歩
- JR根岸線「根岸駅」から徒歩約15分
- バス「岡村天満宮」下車徒歩3分
- 電車・バス利用
- 京急「上大岡駅」中央改札口から京急バス上7系統、横浜市営バス64系統で「笹堀」下車、徒歩約5分
- JR「磯子駅」から横浜市営バス64・78系統で「笹堀」下車、徒歩約5分
- タクシー利用
- 京急「上大岡駅」中央改札を出て右の階段を上がり、裏通りへ約5分(約900円)
駐車場
門の前に3台分あり(利用者のみ)
※ご利用の際は必ず事務所にご連絡ください
※一般利用の駐車場はございません
開館時間
9:00~22:00
※夜間利用がない場合は17:00閉館
休館日
- 12月29日~1月3日(年末年始)
- 設備維持管理保守のための臨時休館(不定期)
電話番号
045-761-3854
拝観時間
公演日程によって異なります。事前にお問い合わせください。
御朱印
なし
公式ウェブサイト
http://www.kuraki-noh.jp/
おすすめポイント
- 歴史的価値 – 大正6年(1917年)建造の本格的な能舞台で、人間国宝を育んだ由緒ある舞台
- 芸術性 – 日本画壇の重鎮・平福百穂作の鏡板の老松は必見の価値
- 日本庭園 – 約8,000坪の広大な敷地に四季折々の自然美が広がる池泉回遊式庭園
- 水琴窟 – 日本の伝統的な庭園装飾の音色を楽しめる
- 多様な催事 – 伝統芸能からクラシック音楽まで幅広い文化体験が可能
- 最新設備 – Wi-Fi6対応で現代的な利用にも対応
まとめ
久良岐能舞台は、都会の喧騒を忘れさせてくれる静謐な空間です。100年以上の歴史を持つ能舞台と美しい日本庭園が織りなす風雅な世界は、日本の伝統文化の素晴らしさを再認識させてくれます。
能楽公演の鑑賞はもちろん、庭園の散策だけでも訪れる価値のある、横浜市磯子区の隠れた文化財産です。伝統芸能に興味のある方、日本庭園の美しさを堪能したい方、歴史ある建築物を見学したい方など、幅広い方々におすすめできる施設です。
ぜひ一度、この由緒ある空間を訪れて、大正時代から続く伝統の息吹を感じてみてはいかがでしょうか。
情報は2025年10月時点のものです。最新の公演情報や利用可能日については、公式ウェブサイトまたは電話でご確認ください。
参考リンク:

