はじめに
鎌倉市台の高台に静かに佇む神奈川県護国神社(神奈川縣護國神社)。この小さな神社は、日本全国の護国神社の中でも極めて特異な歴史を持ち、戦後75年以上を経て、県民有志の熱意だけで創建された、全国で最も新しい護国神社です。
施設概要
【住所】 〒247-0061 神奈川県鎌倉市台4-1199-19
【アクセス】
- 湘南モノレール「富士見町駅」から徒歩約5~6分
- 江ノ電バス「台」バス停から徒歩約5分
【駐車場】 なし(近隣にコインパーキングあり)
【電話番号】 090-4454-8858
【参拝時間】
- 境内:24時間参拝可能(夜間は足元に注意)
- 社務所:常駐なし
【御朱印】 あり(書置のみ・初穂料500円)
【例祭日】 5月29日(近年では5月29日に近い日曜日が通例となっています)
【公式HP】 神奈川縣護國神社 氏子會
【公式Instagram】 @kanagawaken_gokokujinja

御祭神
主祭神:神奈川縣英靈(かながわすべてのほつみたま)
幕末より今日に至るまで、祖国を守るために尊い生命を捧げられた神奈川県・相模国出身の英霊約20,000柱をお祀りしています。
末社:神奈川縣公靈(かながわのしもべのみたま)
県内の殉職公務員の御霊を祀る末社も併設されています。
全国唯一の「空白県」から創建へ

なぜ神奈川県だけが護国神社を持たなかったのか
日本全国の都道府県には、国家のために殉難した英霊を祀る護国神社が存在します。しかし、戦後75年以上にわたり、神奈川県だけが護国神社を持たない唯一の県でした(東京都は靖国神社があるため指定護国神社はなし)。
幻に終わった戦前の創建計画
実は神奈川県でも、戦前に護国神社創建の計画がありました。
- 昭和9年(1934年):政府が一県一社の護国神社創建方針を打ち出す
- 昭和14年(1939年):神奈川県議会が護国神社創建を決議
- 昭和17年(1942年):横浜市三ツ沢に鎮座地が決定し、工事着手
- 昭和19年(1944年):造営工事が進む
しかし、完成を目前にした昭和20年(1945年)5月29日の横浜大空襲によって、建設中の社殿は焼失。戦後の混乱期を経て、再建計画は放棄され、跡地には現在の三ツ沢公園と横浜市戦没者慰霊塔が建てられました。
Japaaan – 神奈川県に護国神社を!創建前に横浜大空襲で焼失
県民有志による創建の軌跡

創建運動の始まり
平成24年(2012年)3月、初代総代・畑元遼氏の「神奈川県に、護国神社を創建したい」という呼びかけから、すべてが始まりました。
小雨のふる昼下がり、横浜市戦没者慰霊塔を訪れた際、「人気もなく寒々しい公園の片隅で、呆然と立ち尽くす二本のいびつな巨塔は、誰からも顧みられることのない英霊たちの姿を表すようだった」という光景が、創建への強い決意を生みました。
困難な道のり
創建運動は決して順調ではありませんでした。
- 神社庁や各地の神社、政治家に相談するも、前向きな返事は得られず
- 「英霊を祀る=戦争美化」という反対の声
- 「神職でもない民間人がおこがましい」という批判
- 資金面での困難
それでも、「英霊に対して感謝と顕彰の誠を奉げる行為は、今を生きる神奈川県民すべての義務」という信念のもと、「やらない善より、やる偽善」の精神で、有志たちは活動を続けました。
創建への道のり
- 平成24年(2012年)5月29日:第一回例大祭を斎行(創祀)
- 平成30年(2018年)5月29日:仮宮として神奈川縣護國神社を創建
- 令和2年(2020年)1月:鎌倉市台に境内用地を購入
- 令和2年(2020年)12月5日:現在地へ遷座し、遷座祭を執行
すべて県民有志の浄財によって実現した、まさに「県民の想いの結晶」です。
境内の見どころ

高台に佇む静謐な境内
神奈川県護国神社は、鎌倉市台の住宅街の中、小高い丘の上に鎮座しています。階段を登っていくと、静かな境内が広がります。
大船観音を望む絶景
境内からは、大船観音をほぼ正面に望むことができます。この眺望は、神社の特徴の一つとなっています。
小さいながらも整った社殿
まだ宗教法人化されていない小規模な神社ですが、有志によって境内整備が進められており、社殿、鳥居、由緒板などが整備されています。
2023年5月29日には、より立派な鳥居も建立され、年々境内が充実してきています。

御朱印について
神職が常駐していないため、御朱印は書置が社殿前に置かれています。初穂料500円を賽銭箱に納める形式です。
※書き置きがない場合、郵送でも可能です(送料込み700円)。
全国でも珍しい「県民の手で創建された護国神社」の御朱印は、特別な意味を持つでしょう。
参拝のポイント
アクセスについて
**湘南モノレール「富士見町駅」**から徒歩約5~6分が最もアクセスしやすいルートです。駐車場はないため、公共交通機関の利用をおすすめします。
住宅街の中の高台にあり、案内看板が少ないため、Google Mapなどを活用して訪問することをおすすめします。
参拝時の注意点
- 境内へ上がる道は階段となっており、車椅子での参拝は困難です
- 夜間の参拝は足元が暗いため注意が必要です
- 社務所は常駐していないため、御朱印は書置のみです
例大祭について
近年では5月29日に近い日曜日に例大祭が執り行われます。5月29日は横浜大空襲の日であり、神社の創祀の日でもある特別な日です。
神社の意義と今後の展望

単なる慰霊施設ではない
神奈川県護国神社は、単なる戦没者の慰霊施設ではありません。
戦後75年間、戦没者を「犠牲者」として「慰霊」することはあっても、日本の平和と独立を守って戦った英霊を「神様」として「顕彰」する場所が神奈川県にはありませんでした。
この神社は、英霊への感謝の気持ちを形にし、その尊い犠牲の上に今日の平和と繁栄があることを次世代に伝える重要な役割を担っています。
今後の展望
現在、神社では以下の目標に向けて活動を続けています:
- 宗教法人認可の取得:財政負担の軽減と公共性の確立
- 祭祀の永続化:次世代への継承
- 地域コミュニティの拠点:地域に愛され、親しまれる場所づくり
有志たちは「生きている限り精進を続け、この営みを次世代に受け継いでいく」という決意のもと、境内整備や活動を続けています。
支援・参加について
神奈川県護国神社は、県民有志の浄財と奉仕活動によって維持されています。
- 定期的な清掃奉仕活動
- 例大祭への参加
- 氏子會への参加
詳細は公式ウェブサイトやInstagramで情報が発信されています。
公式Instagram: @kanagawaken_gokokujinja
日々の活動や境内の様子が投稿されています。
おわりに
神奈川県護国神社は、全国で唯一、戦後に県民有志の手だけで創建された護国神社です。大きな神社ではありませんが、その歴史は、一人の呼びかけから始まった草の根運動の結晶であり、困難を乗り越えて実現した「県民の想いの形」です。
鎌倉を訪れた際、あるいは神奈川県の歴史に思いを馳せる時には、ぜひこの特別な歴史を持つ神社に足を運び、英霊への感謝の気持ちを捧げてみてはいかがでしょうか。
境内から見える大船観音とともに、静かに神奈川の平和を見守り続けています。
基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 〒247-0061 神奈川県鎌倉市台4-1199-19 |
| 電話 | 090-4454-8858 |
| アクセス | 湘南モノレール「富士見町駅」から徒歩約5分 |
| 駐車場 | なし |
| 参拝時間 | 24時間(夜間注意) |
| 御朱印 | あり(書置・500円) |
| 例祭日 | 5月29日 |
| 公式HP | https://peraichi.com/landing_pages/view/gokoku0529/ |
参考情報

